近年、マイホームをできるだけ安く建てたい人から注目を集めているローコスト住宅。
現在、国内を代表するローコスト住宅メーカー5社だけでも、年間20,000棟以上のローコスト住宅が建てられています。
しかし、「なぜ安い値段で家が建てられるの?」、「そんなに安くて本当に大丈夫なの?」、「欠陥住宅ではないの?」という疑問や不安を持つ人も少なくないでしょう。
そこで本記事では、ローコストで家が建つ理由や、ローコスト住宅のメリット・デメリットなどをわかりやすくお伝えします。
これを読むことで、ローコスト住宅の疑問や不安を払拭してください。
もくじ
ローコスト住宅の定義とは?

ローコスト住宅とは、「低価格で建築することができる住宅」のことです。
大手ハウスメーカーの住宅の多くが1坪当たり60~80万円以上するのに対し、ローコスト住宅と呼ばれるものはその半分程度の金額で建築することができるため、総額で1,000万円以下でも建築可能です。
「限られた予算の中で、どうしても一戸建ての家を建てたい!」という方にとっては、まさにうってつけの住宅です。
しかし、ローコスト住宅には明確な定義があるわけではなく、建築する会社がローコスト住宅として販売すれば、坪単価が50万円台でもローコスト住宅になります。
したがってローコスト住宅とは、住宅会社が一般的な住宅よりもコストを抑えて販売する住宅と考えておくと良いでしょう。
ローコスト住宅ならばなぜ安く家が建てられるのか?5つの理由を解説

「ローコスト住宅でも安心して暮らしていけるのか?」、「ローコスト住宅を建てる上ではどんな点に注意すれば良いのか?」などの疑問を解消するためには、まずはローコスト住宅が安い理由を知っておく必要があります。
ローコスト住宅の安さの秘密は、販売から設計、施工に至るまで、徹底したコストダウンをはかっていることにあります。
広告費や材料費、人件費など、できる限りコストを抑えることで、低価格で家を建てることを実現しています。
それではひとつずつ具体的に見ていきましょう。
ローコスト住宅が安い理由
1.販売コストの削減
大手ハウスメーカーの様に、新聞や雑誌などに大々的な広告を打たず、テレビCMを流す際にもローカル放送のみにするなどで、広告宣伝費の削減をはかっています。
またローコスト住宅メーカーは、総合住宅展示場の中にモデルハウスを建てることもほとんどありません。
都内の住宅展示場であれば、一か月の地代だけでも300万円前後することも珍しくないので、年間4,000万円以上の維持費がかかってしまいます。
こうした費用をなくすことで、大幅なコストダウンが可能になります。
さらに、自社で販売網を持たずに、販売は不動産会社や販売会社に任せて人件費を削減している会社もあります。
2.規格化された間取り
ローコスト住宅の間取りは規格化されていて、注文住宅の様に一からプランニングすることはありません。
設計担当者の人件費は決して安いものではないので、間取りを規格化することで設計の手間を省力化することができ、人件費の削減につながります。
3.住宅の形がシンプル
ローコスト住宅の家の形は、総2階建(1階の上に同じ大きさの2階部分がのる間取り)の四角い家がほとんどです。
建物の外観に凹凸をなくすことで、同じ床面積の家でも外壁の面積が少なくなって材料費も施工の手間も減らすことができます。
また、切妻や片流れのシンプルな屋根形状にして施工の省力化をはかっています。
4.材料の大量一括仕入れ
間取りを規格化することによって、使用する建築資材や住宅設備機器などの種類や寸法も限定されるので、大量一括仕入れが可能になります。
大量に仕入れを行うことで、通常よりも安価で仕入れることが可能になります。
5.現場作業の省力化
間取りが規格化されたローコスト住宅では、材料となる木材を現場で加工せず、あらかじめ工場でまとめて切断、加工を行うことが容易になります。
現場での組み立て作業を省力化することができ、大工の人件費削減につながります。
また、現場作業が省力化できれば工期の短縮にもつながるので生産性が向上し、現場監督の人件費削減にも効果があります。
さらに、自社でプレカット工場を所有することによって、より高い次元のコストダウンを実現している会社もあります。
以上の様に、ローコスト住宅が安い理由は、単に品質の低い建材を使用してコストを下げているわけではなく、様々な工夫や企業努力の結果低価格を実現させています。
しかし、これらの理由を知らずに安易にローコスト住宅を建ててしまうと、後悔することにもなりかねないので、注意が必要です。
ローコスト住宅の3つのメリット

ローコスト住宅の最大のメリットは、低価格でマイホームを建築できることです。
月々の住宅ローンの返済額を減らすことができ、暮らしに余裕が生まれます。
また、他にもいくつかのメリットがあるのでご紹介します。
・工期が短い
施工の省力化のために様々な工夫がされているローコスト住宅は、工期が短いというメリットがあります。
通常の注文住宅の工期が4~6か月程度かかるのに対し、ローコスト住宅は3か月程度で建築することが可能です。
・打ち合わせがラク
一から間取りを考え仕様を決めていく注文住宅に対して、ローコスト住宅は間取りが規格化されていて、仕様もいくつかの選択肢の中から選ぶだけなので、打ち合わせに手間や時間がかかりません。
・建て替えがしやすい
ローコスト住宅は安価なので、比較的気軽に建て替えることができます。
ライフスタイルや家族構成の変化にあわせて、1,000万円近くの費用をかけて大掛かりなリフォームを行うよりも、ライフスタイルにあわせて住まいを変えたいという考えの人にとっては、最大のメリットといえるでしょう。
ローコスト住宅の6つのデメリット

ローコスト住宅の安さの理由は、逆にデメリットになることがあります。
ローコスト住宅を建てる際には、あらかじめデメリットをよく把握しておくことが大切です。
・間取りや仕様の自由度が低い
ローコスト住宅の間取りや仕様は全て規格化されているものなので、原則として自由に変更することはできません。
間取りや仕様を変えることも可能ですが、プラン変更や仕様変更を行うと、高額な追加変更費用がかかります。
ローコスト住宅のメリットを最大限に活かすためには、規格プランの中から間取りや仕様を選ぶことが必要になります。
・標準仕様のグレードが低い
生活する上で特に大きな問題になるほどではなくても、一般的なローコスト住宅の標準仕様のグレードは、大手ハウスメーカーの住宅よりも低く設定されています。
完成後に内装材、外装材の質感や、住宅設備機器の機能性などに不満を持つケースもあるので、あらかじめ良く確認しておく必要があります。
・住宅性能が低い
ローコスト住宅の住宅性能は、一般的な注文住宅の性能と比較すると、決して高くはありません。
一部のローコスト住宅メーカーでは、耐震性能の高さや高気密・高断熱をセールスポイントにしていますが、総じて住宅性能面で劣る傾向があります。
また、耐久性の高い素材が使用されるケースが少ないので、メンテナンスコストが高くなる傾向があることにも注意が必要です。
・工期が短い
工期が短いのはメリットでもあるのですが、あまりにも短い工期の場合は品質面での低下を招き、手抜き工事にもつながるので注意が必要です。
・打ち合わせの回数が少ない
人件費削減が不可欠なローコスト住宅では、必要最低限の打ち合わせしか行いません。
担当者との意思疎通不足によるトラブルの原因になる可能性があるので、要注意です。
・大手ハウスメーカーの住宅と比較して、保証面で劣る
一部のローコスト住宅メーカーでは、最長60年の長期保証を行っていますが、一般的なローコスト住宅の保証期間は短めに設定されていることが多い様なので、契約時に確認しておく必要があります。
以上の様に、ローコスト住宅ではメリットとデメリットが表裏一体となっています。
自分にとってローコスト住宅が本当に適しているのかどうかを十分に見極めることが大切です。
1,000万円以下で建てられるおすすめのローコスト住宅をピックアップ

ローコスト住宅といえば、一般的には1,000万円台の住宅を指すことが多いのですが、数あるローコスト住宅の中には1,000万円以下で建築できることを売り物にしたものもあります。
建築本体価格が1,000万円以下で家を建てるためには、延べ床面積25坪としても坪単価が40万円以下になります。
ここでは、坪単価30万円台以下で建てられる極限まで価格を抑えた超ローコスト住宅をご紹介します。
尚、ここでいう坪単価は建築本体価格のことなので、標準仕様に含まれない工事費用は別途になります。
別途工事は住宅会社によって異なりますが、電気・水道・ガスの引き込み工事や屋外給排水工事、ガス工事、居室用照明器具、カーテン、地盤補強工事、外構工事などが一般的です。
また坪単価は、建築するエリアや敷地条件などによっても変わるので注意が必要です。
900万円台で建てられるローコスト住宅
・レオハウス 「大人気の家 CoCo Life」
主力商品「大人気の家 CoCo」よりもさらに低価格の規格型住宅で、平屋と2階建から選択が可能です。
坪単価は平均38万円~となっているので、900万円台での建築が可能です。
・パパまるハウス 「パパまるシリーズ」
年間800棟以上の施工実績を重ねてきた同社がOBアンケートを元に開発した規格型住宅です。
27坪951万円~という価格で、充実した設備を標準装備しているのが特徴です。
800万円台で建てられるローコスト住宅
・タマホーム 「木麗の家」
大人気商品「大安心の家」よりもさらに価格を抑えた規格型住宅になります。
坪単価35万円~40万円の価格帯になっているので、800万円でも建築可能です。
・ジブンハウス
ホームページからデザイン、広さ、テイスト、細部の要素を選択していくことで本体価格が算出されます。
最も抑えられた価格で本体価格899万円(延床面積23.8坪)を実現しています。
700万円台で建てられるローコスト住宅
・アイフルホーム 「i-Prime7」
インターネット限定商品です。
お客様がインターネット上で、自らプランや仕様などをシミュレーションしながら選択することによってコストの削減を実現しています。
インターネットで家を建てるという新しい仕組みにより、700万円台からの家づくりが可能としています。
・はなまるハウス
平屋建ての規格型住宅で低価格を実現させています。
19坪、2LDKの他全5プランを713万円で販売しています。
600万円台で建てられるローコスト住宅
・アイダ設計
一時は555万円や888万円という超ローコスト住宅を建てて知名度を上げましたが、現在は以前の様に価格を公表していません。
しかし坪単価22.9万円から建築可能としているので、条件によっては600万円台で建築することも可能と思われます。
代表的なローコスト住宅メーカー5選

ひとくちにローコスト住宅といっても、どこの会社でも同じ様な住宅を建てているわけではありません。
現在国内には様々なローコスト住宅メーカーがあって、それぞれが独自のローコスト住宅を建てています。
ここでは代表的なローコスト住宅メーカー5社について簡単に概要をご紹介します。
・タマホーム
年間着工件数約10,000棟以上の国内最大のローコスト住宅メーカーです。
タマホームの住宅は充実した標準仕様が特徴で、耐震性能(耐震等級3が基本)をはじめとした住宅性能が高いのがメリットです。
また良質な国産材を多く使用し、ローコスト住宅メーカーではめずらしい最長60年保証制度があります。
・レオハウス
もともとはタマホームのフランチャイズから独立した会社で、ダスキンなどの様々な事業を展開する㈱ナックの100%子会社です。
基本装備からグレードアップしたい箇所だけ選ぶことができる商品などもあり、無駄なコストを抑えながらより住みやすい家を建てることができます。
・ユニバーサルホーム
フランチャイズ制のローコスト住宅メーカーです。
北海道から沖縄まで対応可能で、全国にモデルハウスがあります。
最大の特徴は自社開発の「地熱」を利用した床暖房で、1階全体を暖めます。
外壁材には断熱性能に優れたALCを採用しています。
・クレバリーホーム
フランチャイズ形式のローコスト住宅メーカーのひとつで、耐震性、省エネ性に優れた住宅をセールスポイントにしています。
ローコスト住宅でありながら、標準仕様で総タイル張りに対応しているのが特徴です。
・アイフルホーム
㈱LIXILが運営を行う全国展開のローコスト住宅メーカーで、施工はフランチャイズに加盟している工務店が行います。
母体がLIXILなので、キッチンやバス、トイレなどの住宅設備機器が充実しているのが特徴です。
安い家を建てるためにできるコストを抑える8つのコツ

ローコスト住宅メーカーに依頼せずに、少しでも安く家を建てるにはどうすればよいのでしょうか。
ここでは、安く家を建てるための8つのコツをご紹介します。
1.外観
家の外観はできるだけ凹凸がないシンプルな形状にします。
間取りは正方形に近くなる様にプランニングを行い、総2階の箱型の形状にして、屋根は切妻か片流れとします。
2.間取り
廊下や吹き抜けなどはできるだけ設けずに、部屋数を減らして間仕切り壁やドアを少なくします。
また、1階と2階の間仕切り壁の位置をできるだけ合わせる様にすると、コストダウンにつながるだけでなく構造的にも丈夫な家になります。
さらに敷地に余裕がある場合には、平屋建てにすると坪単価は上がりますが、階段や廊下の面積が少なくなるので、総額では建築費を抑えることができます。
3.開口部
窓の数を減らしたり、窓の大きさを小さくしたりするとコストダウンにつながります。
4.水回り設備
キッチン、浴室、洗面所、トイレなどの水回り設備を1か所にまとめて配置すると、給排水配管経路が短くなるためコストダウンにつながります。
5.内装材、外装材を統一する
天井材や壁材、床材、外壁材、屋根材など、素材をできるだけ統一すると、材料のロスが少なくなるので、コストダウンになります。
6.収納
各部屋に収納を設けずに、ウオークインクロゼットや納戸などの集中収納にすることで、コストダウンになります。
7.工種を減らす
塗り壁やタイルをビニールクロスに変えることで、左官工事やタイル工事をなくすことができるため、コストダウンにつながります。
8.外構工事
外構工事には意外とお金がかかるものなので、できるだけフェンスや門扉を設けずにオープン外構とすることで、コストを削減することができます。
まとめ
ローコスト住宅と聞くと、「ただ安いだけで耐用年数が短く、20年~30年で建て替えが必要になる」と思っている人が少なくありませんが、これは正しくありません。
ローコスト住宅だからといって、建物の寿命が著しく短いということはほとんどありません。
しかし安さの理由を良く理解しないでいると、せっかくローコスト住宅を選んだのに、出来上がってみたら大手ハウスメーカーの住宅と比較してほとんど価格が変わらなかったということにもなりかねません。
ローコスト住宅は規格プランなので、大幅なプラン変更や仕様変更を繰り返すと、そのメリットがほとんどなくなってしまうので注意が必要です。
ローコスト住宅を建てる際には、メリットとデメリットを良く理解して、自分にとって本当に適しているものなのかどうかを十分に検討することが大切です。



コメントを残す