「いつかはマイホーム」というフレーズが表しているように、多くの人にとっても憧れである注文住宅。
自分好みに間取りやデザインを決められる点はマンションや戸建てとは違う魅力があり、住まいにこだわる人にとっては最も贅沢な選択肢といえるでしょう。
しかし、そんな注文住宅を手に入れた人の中にも「建ててから後悔している」という人が一定の割合います。
多く聞かれるのは、主に8つのポイントです。
間取り、デザインなど自由に作れる分、ちょっとした選択ミスや手違いが、その後の暮らしに大きく影響します。
準備が不十分で予算オーバーしてしまった、無駄な費用がかかってしまったという、費用面で後悔しているという声も多く聞かれます。
何千万円というお金を払って建てる家ですから、後悔はしたくないですよね。
これから注文住宅を建てる方には、そんな後悔をしてほしくありません。
信頼できる業者を見つけて、心から満足できる注文住宅を建てるために、先輩施主がどのような点で後悔しているか、また後悔しないためにはどのような点に注意するべきかをまとめました。
家を建てるのはまだ先、という方も、いよいよこれから準備をしようという方も、ぜひ参考にしてください。
もくじ
そもそも注文住宅とは?

まず、注文住宅とはどのような家のことをいうのでしょうか。
一般的に注文住宅といったときには、専有の土地に、間取りやデザイン、設備などを自由に決めて組み合わせる、オリジナルまたはフルオーダーの住宅のことをさします。
暮らし方や趣味、家族構成に合わせて自在に作れるのが最大の魅力といえます。
デザインにこだわりのある方、ガレージやシアタールームなど特定の用途の部屋を作りたい方などには向いています。
ただし、住宅メーカーの中には予めいくつかのベースプランとして間取りや設備仕様を決めたプランを用意していて、実際の設計の際には土地形状や施主の好みに合わせてカスタマイズして作っていくというセミオーダースタイルもあります。
もしくは、設計、設備、仕様の大部分を規格化し、独自の商品として販売している企画住宅もあります。
設計の自由度はそれぞれですが、共通点としては「オーダー(建築請負契約)があってから設計、施工を行うこと」といえます。
すでに建物が建った状態で販売されている建売住宅とは異なる部分です。
専有の土地が必要ですので、実家の敷地内や両親から譲り受けた土地など、もともと所有している土地に建てるか、希望のエリアや立地から土地を探して新たに購入する必要があります。
土地を購入する場合、土地のみを単独で購入して建築会社は別で探すこともできますし、建築条件付きの土地を購入して指定の建築会社に施工を依頼することも可能です。
注文住宅で後悔しやすい8つのポイント

注文住宅を建てた人の中には、「もっとこうすればよかった……」と建ててから後悔している人が少なくありません。
その多くは、建築後には修正がきかない部分です。
実際にどのような点について後悔しているのか、代表的な8つのポイントをご紹介します。
建築費用
最も多くの人が後悔しているのが、建築費用に関することです。
特に、オプションの追加やグレードアップによって予算オーバーしてしまったということが多いようです。
例えば、「モデルハウスを見て気に入ったが実際にはオプション仕様が多く、同じグレードにしようとしたら予算オーバーしてしまった」「メーカーの営業に進められてハイグレードなキッチンを入れたが、実際には使いこなせていないので無駄だった」など。
住宅業界のキラーフレーズとして「一生に一度の買い物ですから」というワードがあります。
数千万円の見積もりを目にしていると、10万円、20万円の追加費用が小さく感じられてくるもの。
「せっかくだから」とオプションを追加したり設備をグレードアップしたりして当初の予算から少しずつはみだし、気づけば100万円単位でオーバーしていた、という声がよく聞かれます。
収納スペース
収納スペースも、住宅の設計では悩みどころ。
部屋をすっきり使いたいと考えて収納スペースを多く作りたいと要望する方は非常に多いです。
必要な場所に必要な容量の収納を作れば、もちろん収納家具を置く必要がなく、その分部屋をすっきりと使うことができます。
問題は「収納が少なすぎた」「こんなに必要なかった」という場合です。
前者は、「設計時には十分だと思ったが、住んでみると意外と荷物が多かった」という場合や、「子どもの成長とともに荷物が増えて収納場所に困っている」という場合があります。
新築当初は新鮮な気持ちで暮らしているものの、住み始めてから数週間~1ヶ月ほどして生活のリズムが固まってくるとともに、「ここにクローゼットがあれば」「ちょっとした棚があれば」と思うようです。
間取り
間取りも、住み始めてみないと果たして正解だったのかどうかわからないポイントです。
リビングの広さ、玄関からの距離、キッチンと水回りの配置などで後悔している方が多いです。
中でもよく聞かれるのは、洗濯動線についてです。
1階リビングと水回り、2階に寝室とバルコニーというオーソドックスな間取りの場合、毎回洗濯機からバルコニーまでの距離が遠いと、濡れて重たくなった洗濯物を持ち歩かなければなりません。
他に、「リビング階段にしたことでダイニングに落ちるほこりが気になってしまう」「2階に水回りをまとめたら、夜中に洗濯機を回す音が階下の寝室に響いてうるさい」という例もあります。
設備
キッチン、バス、洗面、トイレなどの洗面の使い勝手も、暮らしに大きく影響します。
「コストを抑えるために最低限のグレードのものにしたけれど、ワークトップが狭くて不便」「足を伸ばせる大きな浴槽にすればよかった」など、設備に関する後悔も多いようです。
ただ、設備については、新築後15年~20年ほど経つと交換時期となるので、そのタイミングで入れ替えが可能です。
どうしてもという場合はリニューアル時期を早めて入れ替えるという方法もよいでしょう。
窓
窓に関する後悔は、主に位置や仕様です。
「リビングの明かり取りの窓が隣家の窓の位置と重なってしまい互いに視線が気になってしまう」「明るい道路側にリビングを配置し、道路に面して掃き出し窓を作ったのはいいけれど、外からの視線が気になって滅多にカーテンを開けられない」など。
また、窓には引き違い、すべり出し、フィックスなど開き方に種類があります。
用途に合わせてきちんと選ばないと、目的を果たせません。
吹き抜けは人気ですが、吹き抜け部分に高窓を付けた結果、掃除が行き届かないという後悔も。
寒冷地では二重窓が推奨されますが、予算の関係でカットした結果冬場の寒さが厳しく、結果的に光熱費が高くなってしまったという例もあります。
室内デザイン
クロスの柄や床、天井の仕上げといった室内デザインも後悔のもと。
プランニング当時の好みで作った結果、だんだん好みと合わないと感じてきたり、飽きてきてしまったりということがあります。
かといって、いわゆる「飽きの来ないデザイン」はシンプルでスタンダードなもの。
せっかく注文住宅を建てるなら自分の好みに合わせて作りたいところですが、悩ましいところでしょう。
外装や外構
内側だけでなく、外観や外構といった外から見える部分についても後悔している方が多いようです。
「無難なデザインにしたら周囲に同じような家が並んでしまい分譲住宅のようになってしまった」とか、反対に「他の家とは違うデザインにしようとした結果、奇抜すぎて悪目立ちしてしまっている」など、周囲との調和が大きなネックとなります。
また、外壁については「フレンチスタイルで漆喰の塗壁にしたけれど、数年たつと汚れが目立って気になる」という声も。
外装に限らず、住宅は地域の気候に合わせて作られることが多いので、輸入スタイルをそのまま持ち込むとマッチしないということがありえます。
汚れや耐久性を考えればサイディングが機能的です。
外観に不満を感じ始めてしまうと、毎日帰宅するときに少し残念な気持ちに。
クロスや水回り設備と異なり、外観はなかなか変更できないので、あきらめるか慣れるかしないといけません。
業者選び
「業者選び」で後悔しているという人も多いです。
ある意味家づくり全体に関わることなので、ここを後悔している人は少なからず家そのものにも不満や後悔を抱えているといえます。
「有名なメーカーだったので信頼して契約したが、担当営業が経験不足でなかなか話が進まなかった」「個性的な家が建てられると思って小さな工務店に依頼したら、建築途中でまさかの倒産」「あれもダメ、これもダメと融通が利かなくて、結局ベースプランそのままの家に。これなら建売を買った方が良かった」など、業者選びに関する後悔の声は後を絶ちません。
注文住宅で後悔しないためには業者選びが大切!

注文住宅の満足度を左右する最も大きな要因と言えるのが、業者選びです。
得意とする工法、スタイル、プランニングの進め方、担当スタッフの人柄、アフターフォローなど、選ぶポイントは数えきれないほどあります。
百点満点の業者が見つからなくても、自分が重視する点は外さない業者を選びたいものです。
最低限の基準として、誠実な対応をしてくれる業者であること。
実は注文住宅を建てて後悔している人の何割かは、業者の対応に不満を感じています。
故意であるか事故であるかは別として、建築の工程で何かトラブルが起きたときに誠心誠意対応してもらえれば、納得もできます。
金額が大きいだけに揉めるときは揉めますので、信頼できる相手かどうかは契約前によく見極めてください。
注文住宅の業者には主に3つの種類がある
業者選びのポイントの前に、そもそも注文住宅を建てられる業者にはいくつか種類があることを知っておきましょう。
それぞれ設計や施工のスタイルが異なるので非常に大切なポイントです。
設計事務所
設計事務所は、その名の通り住宅の設計を専門に行う会社です。
では施工はどうするのかというと、提携している工務店に依頼したり、反対に工務店側から依頼を受けて設計を行うこともあります。
施主が直接設計事務所に依頼する場合は主に前者のパターンで、窓口となるのは設計を担当する設計士・建築士です。
設計が確定して着工してからは、担当設計士が現場監理を行います。
設計通りに施工が進められているかチェックするためです。
つまり、設計事務所では施工以外の工程を担当することになります。
ちなみに住宅の設計を行う担当者の肩書きには「設計士」「建築士」「建築家」などがありますが、資格として認められているのは「一級建築士」「二級建築士」などの「建築士」です。
設計士はその会社の中での肩書です。
建築家も資格とは無関係で、いわばミュージシャンや芸術家と同じような、自称できる職種名です。
ハウスメーカー
一般的に誰でも社名を知っていて、全国規模で事業を展開し、年間で数百~数千棟の施工を手がけているような大手住宅会社を「ハウスメーカー」と呼びます。
総合住宅展示場に出展しているのはほとんどが大手ハウスメーカーです。
フルオーダーの注文住宅を作ることももちろん可能ですが、多くの場合はベースプランをもとにカスタマイズしていくスタイルでプランニングを行います。
事業規模が大きいため、プランを規格化しシステム化することで、効率的な家づくりを行っています。
ハウスメーカーでは、営業、設計、現場監理、アフターサービスなどさまざまな担当が分業で家づくりを進めます。
一部のハウスメーカーは徹底的に材料費や輸送費、設計費などを削って1,000万円台のローコスト住宅を提供していますが、展示場での出展料や巨額の広告宣伝費、高水準の人件費など、住宅建築以外にかかるコストが多いため、全体的に費用は工務店に比べると高い傾向にあります。
工務店
地域に根付いた小規模の住宅会社を「工務店」と呼びます。
住宅の新築だけでなく、雨戸の修繕や屋根の修理なども行う、町の工務店です。
多くの場合数人から十数人の少人数で構成されているため、営業担当が設計をしたり、社長が経理処理を行ったりと一人が何役も兼任しています。
ベースプランや企画住宅を提案している工務店も多いですが、ハウスメーカーに比べると自由度が高く、こだわりの多い人に向いているといえます。
価格はピンからキリまでですが、広告宣伝費などがかかっていない分、ハウスメーカーに比べると割安といえます。
一方で小規模ならではのリスクもあり、経営状態によっては景気に影響されて倒産や事業再生の可能性があります。
最悪の場合、建築中に倒産して工事がストップということも。
もちろんこのようなリスクに備えるための保険や制度がありますが、企業としての地盤はハウスメーカーに比べるとどうしても弱くなります。
自分のニーズに合う業者を選ぶことが重要
業者選びで重要なのは、自分のニーズに合う業者を探すということです。
ざっくりいうと、個性的なデザインの家を建てたいのなら建築事務所へ、大手で安心して建てたいならハウスメーカーへ、こだわりの住まいをリーズナブルに建てたいなら工務店へ依頼するのが適しているといえます。
ただし、その中でもコストを安くしたいのか、断熱性や耐震性などの住宅性能を重視するのか、無垢材や珪藻土といった自然素材を使いたいのか、家事や子育てのしやすい家にしたいのか、輸入住宅風にしたいのかなど、自分が重視する点を得意とする業者を選ぶことが何よりも大切です。
特に、工務店は各社で特色があるので、ホームページの情報や完成宅の見学会などで実際にその会社がどのような家を建てているのかチェックしてから話を聞きに行くと、無駄がないでしょう。
注文住宅で後悔しないための5つのポイント

実際に注文住宅で家を建てる時に、後悔しないための5つのポイントがあります。
「建てたい家」のイメージを明確にする
まずは、自分がどんな家を建てたいのかというイメージを明確にしましょう。
かっこいい家、かわいらしい家、地震に強い家、夏涼しく冬暖かい家、ガレージがある家、スキップフロアの家、収納が多い家、家事がしやすい家……など、軸はいくらでもあります。
もちろん一つに絞る必要はないので、建てたい家、もしくは叶えたい暮らしを具体的に思い
描くことが大切です。
注文住宅についての知識を身につける
住宅建築や注文住宅についての知識がないとメリット・デメリットを判断できないので複数の会社を比較することもできず、結局は住宅メーカーの言いなりになってしまいます。
設計士のような専門知識を学ぶ必要はありませんが、注文住宅を建てるうえで最低限の知識を身につけておきましょう。
例えば、「容積率」「建ぺい率」といった用語の意味や、先に上げた建築事務所・ハウスメーカー・工務店の違いとメリット・デメリット、土地探しから引き渡しまでのだいたいのステップ、住宅ローンの種類などです。
ネット検索で調べられることばかりですので、住宅メーカーと交渉する前に最低限の知識を入れておきましょう。
色々な注文住宅を見学しておく
建てたい家のイメージが具体的にわかない場合は、とりあえず最寄りの住宅展示場に出向いていろいろな注文住宅を見学する、というのも一つの手です。
近所の工務店のモデルハウスやオープンハウスがある場合は、とりあえず見学してみるのもよいでしょう。
複数の会社の施工例を実際に見ることによってなんとなく違いが見えてきます。
見学しているうちに、「あ、この間取りはいいな」「このデザイン素敵だな」「こんなキッチンを入れたいな」というイメージがだんだんと固まってきます。
反対に「これはないな」というものも生まれてくるでしょう。
少しずつでよいので見学の際の資料や写真などと一緒に感想をメモして溜めていくと、いざプランニングとなった時に「何もわからない」ということがありません。
住宅展示場で見学するとしつこい営業にあうこともありますが、その対応面も比較の対象。
営業担当が信頼できなさそうなら選択肢から外して構いませんし、契約を急かすこともなく、話がしやすそうならそのまま検討してもよいでしょう。
ただし、見込み客と思われると電話やメールでのアプローチが続くこともあります。
まったくその気がないならはっきりと断りましょう。
理想の家を建ててくれる業者を選ぶ
これが一番難しいといえば難しい点ですが、何と言っても「理想の家を建ててくれる業者を選ぶ」ことです。
自分が重視する点を満たしてくれるかどうか、そしてそれを予算内で実現できるかどうかという点が大きなポイントになります。
もちろん、お金をかければどれだけでもハイグレードな家を建てることができます。
しかし予算は有限ですし、住み始めてからの資金を確保しておく必要もあります。
どこにどれだけかけるのか、それに納得できるのかという点を慎重に見極めましょう。
さらに、対応に納得できるかどうかも重要です。
家は建てて終わりではなく、建築後数十年住む大切な財産です。
住んでからも細かい点の調整や修理などで長い付き合いになる相手です。
こちらの要望にある程度応じてくれるのかどうか、相談ごとにはプロとしてアドバイスしてくれるかどうか、トラブルがあった際に誠実に対応してくれるかどうかなど、対応面もしっかり検討しましょう。
納得のいかないことはとことん質問・相談する
プランニングの途中でも、着工後でも、引き渡し直前であっても、確認しておきたいことや納得のいかないことがあったら何度でも質問、相談しましょう。
特に、間取りや仕様は一度決定してしまうと後から変更することが難しいので、途中であっても営業担当や設計士、場合によっては現場監督を捕まえて確認してください。
また、住宅建築に関わる契約書は非常に難解な用語が多く複雑です。
隅々まで読む気にはなかなかならないものですが、その後の暮らしに影響する大切な契約です。
特に、引き渡し後に瑕疵が見つかった場合の保証や、何年後まで定期点検に来てもらえるのか、どこまでが無償保証の対応範囲かというアフターフォローの部分は、できるだけ正確に把握しておいた方がよいでしょう。
建築請負契約の際には契約書を読み上げる決まりになっているので、その時にも「あれ?」と思ったら質問して構いません。
逆に、そうした契約書関係で質問にきちんと答えられない会社は信用度が落ちます。
「それは保証の範囲ではありませんが滅多に壊れませんので」や、「これまでトラブルになったことはありません」というのは、単なる実績であって保証ではありません。
納得できるまで確認して、少しでも不安があるなら確認すべきです。
【Q&A】注文住宅を建てるのは難しい?

注文住宅を建てるのは、車や家具を買うのとはわけが違います。
プランニングは法律的な制約をクリアしながら組み立てる必要がありますし、コストの関係で悩む場面もたくさんあるでしょう。
自由に建てられるからこそ知識が必要です。
実際に住んでみないとわからないことだらけですが、だからこそ事前に手に入る知識を学ぶことをおすすめします。
展示場や見学会を活用するのもよいですね。
正しい知識を適切に学べば、注文住宅の建築は決して難しいものではありません。
まとめ
注文住宅を建てるには、戸建て住宅を買うよりははるかに時間も労力も使いますが、その分自分仕様の住まいができるのですから満足度は高いはずです。
せっかく注文住宅を建てるなら、後悔のない納得のいく家づくりを行ってほしいものです。
注文住宅を建てるにあたって、基本知識は邪魔になりません。
特に、住宅やインテリアが好きな方にとっては、学んでいくことも楽しめるかもしれません。
近年はSNSなどで家づくりの記録を公開している施主も多く、参考になる情報はあふれています。
欠陥住宅や住宅メーカーとのトラブルの話も多いですが、「よい家を建てたい」という純粋な想いをもって家づくりに臨んでいるメーカーも数多くあります。
ぜひ、そうした良心的なメーカーと巡り合って家づくりを行っていただきたいと思います。



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